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ノルウェー流人工知能の使い方

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Joshua Sortino アンスプラッシュ

人工知能によって、資源利用量の削減と大量のデータ処理が可能になります。また人工知能は、人間よりも優れた判断を下すこともあります。魚のストレスを減らすことも出来るのです。

人工知能(AI)は、今では誰もが使う言葉です。コンピューターの処理能力と処理データ量は指数関数的なスピードで増大しています。AIを用いることで、かつては人間の知能を必要とした仕事を、よりすぐれた方法で、効率とスピードを上げて処理できるようになるのです。

「これは地球にとって朗報です」。こう話すのは、「スマート・イノベーション・ノルウェー」が運営する専門産業クラスターの1つ「アプライドAIクラスター」の代表を務めるヒェルレイダー ムスケ(Kjell Reidar Mydske)氏です。

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アプライドAIクラスター、ヒェル レイダー ムスケ氏

「人工知能は、持続可能性を直接促進することができると思います」

というのも ムスケ氏によれば、資源集約型の仕事のやり方を改良して新しくするために、AIが役立つからです。

「様々なプロセスの効率を高めるのに、人工知能には膨大な可能性があります。エネルギーと原材料の浪費は持続可能性と正反対の行為です。そうした場面で人工知能が効果を発揮します」

一方で、世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2017」の中では、AIは世界中の人々に最も大きなプラスの波及効果をもたらす技術であるが、極めて高いリスクをはらむ技術でもあると結論づけています。AIについては、その透明性、乱用の可能性、プライバシー、「ダーティーデータ」(間違い、改ざん、構造的バイアスのあるデータ)に関する問題が取り沙汰されています。

これらの問題にノルウェーは真摯に対応しています。ノルウェー政府は「人工知能国家戦略」を最近発表しました。これは、持続可能な発展を推進する信頼性の高いAI技術を開発するための国の方針を定めたものです。

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Sensonomic社

    AIに関する簡潔なまとめ

    • 以前は人間の知能を必要とした仕事をソフトウェアによって実行する

    • パターン認識やデータ処理において人間を遥かに凌ぐ

    • 自然言語処理、イメージ分析、ロボット工学に活用可能

    ノルウェーにおけるAI

    では、ノルウェーがAI国家として世界をリードするために必要な競争優位は何でしょうか?これについて、ムスケ氏はいくつか指摘します。

    「ノルウェーはデジタル化の進んだ国であり、新技術に関しては第一線に立っています。問題は、使われている技術が何かということです。その答えは往々にして、他国で開発された技術です。ノルウェーは自国で使われる人工知能をもっと開発しなければなりません。我々は、それが可能な立場にあります」

    おしなべてノルウェーの人々は、特に企業と産業界は、高度なデジタルリテラシーを持っています。また、率先して新技術を取り入れる傾向があります。さらにノルウェーには、世界で最もデジタル化と技術的に進んだ公共セクターがあり、デジタル関連の技術とサービスに関する規制の枠組みが整備されています。

    しかし、ノルウェーの最大の競争優位は、企業および公共セクターへの人々の信頼が高いこと、および雇用者、労働組合、政府の三者間に緊密な協力関係があることでしょう。AIを利用するための規制および倫理原則を構築するにあたって、こうしたことが優れた前提となります。

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    Robynne Hu アンスプラッシュ

    持続可能性推進のためのAIの活用

    アプライドAIクラスターの代表 ムスケ氏によれば、以前にも増して多くのノルウェー企業が、AIによる持続可能なソリューションから優れた成果を達成しています。

    Völur社はよい仕事をしたと思います。この会社は、人工知能を使って食肉生産の効率を向上させました。家畜から食肉を最大量生産する方法を見つけ出し、そのことで農業分野のカーボンフットプリント削減に貢献しています。さらに、eSmart Systems社は、電力供給網のメンテナンス向上のために人工知能を用いています。特に実用面では、電線修理のためにヘリコプターを飛ばす回数が減っています」。ムスケ氏はこのように説明します。

    「AI国家戦略」の指摘によれば、ノルウェーはAIの応用分野、特にエネルギー、海洋産業、健康といったノルウェーが世界的に活躍する産業分野で、リーダーとなれる可能性があります。

      たとえば漁業分野では、AIは特定の漁業資源の監視や過剰捕獲の特定、漁獲量の割り当てに用いられるほか、漁業者が混獲や乱獲を避けるための有用なツールとなりえます。

      ノルウェーの企業Scantrol Deep Vision社は、トロール漁船の漁獲支援のために、AIを用いた画期的なツールを開発しました。Deep Visionシステムは、海中カメラを用いて海中の魚群を特定し、船に引き上げなくてもその規模を測定できます。このため、漁獲量が割当量に達したときには、漁を止めて混獲を減らすことが容易にできるようになります。

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      Fishency Innovation社

      これ以外にも、水産養殖の生産性と魚の健康の改善のために、AIを用いたソリューションを開発している企業がノルウェーにはあります。増え続ける人口に持続可能な方法で食料を供給するために、これは重要なことです。サーモンの養殖においてフナムシの増殖を予防・管理するために、AIは非常に有用なツールであることが知られています。

      CreateView社は、センサーとカメラとAIを連携させて、網生け簀から膨大なデータを収集・分析して問題解決を図っています。これにより養殖業者は、ワクチン接種と餌やりを最適化し、フナムシの増殖に初期段階で対応することが出来ます。さらに生産コストとエコロジカル・フットプリントを削減し、魚のストレス低下による健康改善効果が見込めます。

        ノルウェーは、他にも持続可能な都市計画などの分野で進歩を遂げています。Spacemaker社のAIベースのソリューションは、インフラ、地形、モビリティー、生活の質といった複数の要素を評価し、建設用地を提案します。さらにこのソリューションは、提案内容を視覚化して特徴を説明し、設計者とデベロッパーが十分な情報に裏打ちされた判断を下せるようにサポートします。AIおよびその開発と運用の信頼性には一定の疑問が残るものの、これらの事例をみれば、AIがよりよい社会の建設と更なる価値の創造にとって重要なツールであることが分かります。信頼できるAIと高度に革新的な企業のための国家戦略を備えたノルウェーは、この刺激的な技術の可能性の開拓に必要なものを十分に持っているのです。

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          Anderson Barbosa アンスプラッシュ