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ノルウェーはバッテリー大国か?

10月27日, 2020
By The Explorer

Beyonder

*サイト上の各リンクの先は英語の情報となります。

豊富なクリーンエネルギーに世界最高水準のプロセス産業、そして他に類を見ないほどの電気自動車(EV)の使用済みバッテリーの活用の可能性。こうした条件を備えたノルウェーは、ヨーロッパにおける環境配慮型バッテリーの生産に向けて歩みを進めています。

輸送機関や産業活動からの温暖化ガスの排出削減を進めるにあたり、バッテリーは重要な鍵を握ります。欧州グリーンディールEU循環型経済行動計画の両方において、持続可能なバッテリーのバリューチェーンをヨーロッパに構築する必要性が述べられています。

「今のところ、アジアがバッテリーの開発と生産をリードしています。ヨーロッパの自動車産業の競争力と持続可能性を保持しようとするなら、我々にはバッテリーの独立性が必要なのです」

ラース ペター マルトビィ(Lars Petter Maltby)氏はこのように語ります。

マルトビィ氏は、「EYDEクラスター」(持続可能なプロセス産業のためのノルウェー専門技術センター)においてイノベーションセンターの代表を務めています。Elkem社Eramet Norway社Glencore Nikkelverk社Norsk Hydro社REC社といった大企業をメンバーに持つEYDEクラスターは、ノルウェーにおける持続可能なバッテリーのバリューチェーンの発展をリードする存在です。

ノルウェーで最初の本格的なバッテリー工場Morrow Batteries社の設立が先日発表され、EYDEクラスターの活動に大きな勢いを与えています。

「このことは、ノルウェーにおけるバッテリーのエコシステムを大いに強化することでしょう」とマルトビィ氏は語ります。

連絡先

ミカール ルイス ベルグ(Michal Louis Berg)
Invest in Norway投資担当

世界最高水準のプロセス産業を擁する国

ヨーロッパのバッテリーのバリューチェーンにおいて、ノルウェーは重要な役割を果たすことができ、それには正当な理由がある、とマルトビィ氏は考えています。

ノルウェーのエネルギーは、事実上全てが再生可能なエネルギー源に由来するため、国内で加工される素材の環境フットプリントは、世界でも最小の部類に入ります。

EYDEイノベーションセンターのCEO、ラース ペター マルトビィ氏

「バッテリーの生産は非常にエネルギー集約的なので、手ごろな価格で再生可能エネルギーが使える地が理想的なのです」

さらにマルトビィ氏の指摘によれば、ノルウェーの産業はニッケル、コバルト、黒鉛、銅の精錬に加えて、相当量のアルミニウムとシリコンを生産しています。これらすべてが、バッテリー生産に不可欠な素材なのです。

マルトビィ氏は言います。「ノルウェーではすでに、リチウムイオン電池に必要な素材の多くを生産しています。ノルウェーの企業は、特別な品質基準が求められる高性能素材を専門的に供給しています。このことによって、材料加工に必要な知識と技能の高度な集積がノルウェーの産業界に実現されたのです」

Eramet Norway社は、世界最高水準のクリーンな生産プロセスを採用してマンガン合金を生産しています。

成長の機会

ノルウェーのバッテリー産業は天文学的ともいえる成長の入口に立っていると、ノーラ ロセンベルグ グロバック(Nora Rosenberg Grobæk) 氏は言います。グロバック氏は、「Invest in Norway」においてノルウェー発のバッテリーの価値提案を行う責任者です。

「欧州投資銀行(EIB)によれば、今年の投資額は10億ユーロに達することが見込まれます。海外の投資家や顧客も含め、多く人々の活動と関心がこの分野に集まっていると私たちは見ています。こうした状況では、ノルウェーが持続可能性を重視してきたことに加えて、電気自動車(EV)および電化一般に関する成熟した市場が国内に存在することが、重要なセールスポイントになります」

ノルウェーにおける最大の成長と投資の機会は何かという問いに対して、グロバック氏は4つの領域を指摘します。

「世界水準のプロセス産業の存在を考えれば、ノルウェーには先行素材の生産に大きな可能性があります。つまり、バッテリーに組み立てられる前に加工の必要がある金属の処理です。私たちはこの分野に高度な競争力と専門性を持っています。またよく知られているように、この産業分野で働くノルウェーの人々は、革新的かつ効率的な方法で高品質な製品を供給することができます」

「さらにノルウェーには、バッテリーのセルの開発や製造を立ち上げる機会が存在します。それが可能であることは、Freyr社Beyonder社といった新進気鋭の企業や新興企業のMorrow Batteries社の活動をみれば分かります。また、技術面での機会もあります。何と言っても、ノルウェーは自律運航船や再生可能な海上輸送を生み出した国ですから。そして最後に、ノルウェーにはバッテリーの再生と再利用を産業として実行する大きな潜在能力があると思われます」

Mechatronics Innovation Labは、製造業および素材加工産業のためのメカトロニクス技術のパイロットテストと品質検査を専門としています。

循環型イノベーションのパイオニア

グロバック氏の最後の指摘は特に重要です。持続可能性の観点から、バッテリーの寿命は、その生産方法と同じくらい重要な問題です。欧州グリーンディールでは、バッテリーの生産は循環型でなければならないと述べられていますが、その意味するところは、今日のバッテリーが明日のバッテリーの生産のために使われなければならないということなのです。

しかし、バッテリーのリサイクルは困難な課題です。EYDEクラスターのマルトビィ氏は次のように説明します。

「電気自動車のバッテリーから素材を抽出して再利用する過程には、技術的な困難が伴います。だからといって不可能というわけではありません。実際、リチウムイオンバッテリーが再生されている事例は幅広く見られます。しかし我々は手法をさらに改良して、より費用対効果の高い再生方法を実現しなければなりません」

この点に関しては有望な展開が期待できると、マルトビィ氏は指摘します。

「ノルウェーには、バッテリー再生のためのソリューションの開発と改良を目的とするLIBRESプロジェクトがあります。これは、ノルウェーのアルミニウムメーカーのNorsk Hydro社をリーダーとする産業界とノルウェーおよびドイツの研究機関の共同プロジェクトです。これとは別にBATMANというプロジェクトがあり、バッテリー素材の使用法と寿命について詳細に調べています。またBATMANでは、バッテリー再生のバリューチェーンが成熟する過程で、ノルウェーにとってどのような事業機会が生じるか詳細に検討しています」

Norsk Hydro社は低炭素アルミニウムを生産しています。これはバッテリーの重要な素材です。

ヨーロッパにおける展望

ノルウェーはEU加盟国ではありませんが、欧州経済領域(EEA)協定によってEU経済に完全に組み込まれています。このため、ノルウェーとEUの間では、何の障壁もなく素材、資本、技術および労働者の移動が可能です。したがってノルウェーの産業は、ヨーロッパにおけるバッテリーのバリューチェーンに直接貢献することが出来るのです。

これこそが、マルトビィ氏が切望する事業機会なのです。また、ノルウェーでは、国内の電気自動車の普及率が世界一高いことを考えれば、循環型バッテリー生産の実験室としてさらに大きな役割を果たす可能性もあります。

「電気自動車の使用済みバッテリーを大量に活用できるノルウェーは、バッテリー再生の技術開発とビジネスモデル展開には絶好の地です」

ノルウェーの産業はこの課題に対応可能であると、マルトビィ氏は自信を持って言います。

「特に使用済みバッテリーの貯蔵、輸送および処理に関して、解決しなければならない規制上の課題がいくつかあります。また、ノルウェーのプロセス産業の内部で共同と協力の機会を増やしていくことも必要です。それこそがEYDEクラスターで私たちが取り組んでいることなのです」 「急いだほうがよいかもしれません。ここには、チャンスへと通じるノルウェーならではの入り口がありますが、それがいつまでも続く訳ではないのですから」 マルトビィ氏はこのように話を結びます。

連絡先

ミカール ルイス ベルグ(Michal Louis Berg)
Invest in Norway投資担当