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ノルウェーのバッテリー循環経済の リサイクル格差を埋める

5月30日, 2022
By The Explorer
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大量のEVバッテリー供給、EV普及に好都合な政策、そしてクリーンで安価な再生可能エネルギーがノルウェーのグリーンバッテリー産業の強固なバッテリーリサイクルセグメントの発展を加速させました。これに加えて、豊富な天然資源の基盤と高度に熟練したプロセス産業からも、ノルウェーがバッテリーリサイクルの世界的なリーダーとなる理由は明らかです。

電動化への世界的なトレンドが次第に強まる中、クリーンな電気の需要を満たすには、世界中でさらに数百万台の環境に優しいバッテリーが必要であり、それは電気自動車(EV)の駆動から、太陽光や風力のような再生可能資源で発電する電気の蓄電に至るまでのあらゆる用途に向けられます。しかし、ここで非常に強く求められているのは、サステナブルな生産ではなくサステナブルなバッテリー産業です。循環バリューチェーンの創出ではリサイクルが鍵となっており、ノルウェーはこの挑戦的な分野のパイオニアとして台頭しています。それでは、ノルウェーはどのようにしてそこに至ったのでしょうか。

EV採用の世界チャンピオン

新しいバッテリーリサイクル産業には、原料となるバッテリーが、それも大量に必要です。2021年初頭に、ノルウェーは世界最初に「車の新規販売台数の半分がEVである」国になりました。このEVの記録的な普及台数が、ノルウェーのバッテリーリサイクル産業の発展を加速させました。

EVの急増から利益を得ている1つの会社が、ノルウェーのHydroとスウェーデンのバッテリーメーカーNorthvoltとのジョイントベンチャーであるHydroVoltです。HydroVoltは、最初のバッテリーリサイクル工場をノルウェーに設立しており、2021年後半に開業し、100%再生可能エネルギーでの操業を目指しています。Hydroが中古バッテリーからのアルミニウムをリサイクル・リユースし、Northvoltがリチウム、マンガン、コバルトを含む「ブラックマス」を自社のバッテリー生産でリユースするか、他の業者に販売されることになっています。

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Fredrik Andresen

CEO

HydroVolt

EV利用の先頭に立つノルウェーの立場が、非常に良好な投資条件を生み出しています。さらに、ここ数年でリコールされた多くのEVバッテリーがノルウェーで使用されていたもので、膨大な回収量になっています。我々にとっては、このことがバッテリーリサイクルの投資のリスクに向けたインプットとフローになっています」。

政策によるEVバッテリーベースの増加

豊富なEVバッテリー供給量を生み出す大きな要因が、税制の手厚い優遇措置などの政策です。ノルウェーでは、EVは消費税や自動車登録料の対象外とされており、車の総コストが低減されています。また、1人あたりの公共充電スタンドの数も世界最大となっています。ノルウェーの新しい中道左派政府の綱領では、原材料、コンポーネント、使用、収集、リサイクルを含むバッテリーのバリューチェーンをさらに完全なものに発展させることが産業目標の1つとなっています。

「政策によって消費者の動向が変化しています。ノルウェー国民は電気自動車を買いたがっており、他の国々よりも速いペースで購入が進んでいます。そのため、現在も、今後の数年間も、数千台ものEVバッテリーを容易にリサイクルに利用できますが、これはどこの国でも同じというわけではありません。また、バッテリー企業は、資金提供の形で政府の手厚い支援を受けています。例えば、我々のバッテリーリサイクルベンチャーは、気候・環境省直轄の国営企業であるEnovaから500万米ドルを超える金額を受け取っています」とAndresen氏は言います。

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ノルウェー、FredrikstadのHydroVoltバッテリーリサイクル工場

サステナブルなバッテリー生産にはリサイクルが不可欠

ノルウェーのバッテリーバリューチェーンが目指すところは、生産を大きく超えています。真のサステナビリティを達成するために、バッテリー産業は循環経済をベースにしなければならず、それにはリサイクルが不可欠です。このことについては、クリーンバッテリー情勢への新規参入企業FREYR BatteryのCEOであるTom Jensen氏以上に精通している人物はいません。FREYRは北ノルウェーに43GWhのリチウムイオンバッテリーセルの工場を建設中で、生産戦略ではリサイクルに重きを置いています。

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Tom Jensen

CEO

FREYR Battery

「バッテリー生産を脱炭素化するには、そのサプライチェーンも脱炭素化しなければならず、これにはリサイクルのつながりも含まれます。ノルウェーには、地球上のほとんどの地域より安価な再生可能エネルギーが豊富にあります。また、必須となる投入資源もあります。事実、バッテリー循環経済に必要なほぼすべての物は北欧圏内で入手できます。」

FREYRは、グローバルに調達する必要のある原材料の供給者に対し、その原材料が責任を持って生産されていることを証明することを求めます。原料の調達または生産は、国際人権・労働法および環境基準に適合した条件で実施されなければなりません。

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FREYRの最初のリチウムイオンバッテリーセル工場 ―建設中―

ノルウェーへの投資が欧州への門戸を開く

ノルウェーはEU加盟国ではありませんが、EEA協定を通じてEU単一市場に組み込まれています。つまり、ノルウェーとEUとの間では、人、サービス、資本、物資(多少の例外あり)が自由に行き来できます。その高度な専門知識と大量のEVバッテリー供給のおかげで、ノルウェーの産業は欧州におけるバッテリーのバリューチェーンに直接貢献することができます。

さらに、ノルウェーにはEUの規則と市場トレンドが適用されます。例えば、欧州グリーンディールでは「バッテリー生産は循環的でなければならない」と定められており、新規バッテリーの製造には既存のEVバッテリーを使用しなければならないことになります。新しい規制体制では、バッテリーのバリューチェーンのあらゆるステップで、リサイクルとトレーサビリティにさらなる重きが置かれています。

欧州のバッテリー産業におけるノルウェーの役割について、HydroVoltのAndresen氏は熱弁します。「HydroVoltはEuropean Battery Alliance(欧州バッテリー同盟)、つまり、EUの手段である『競争力のあるサステナブルなバッテリーセル製造のバリューチェーンを欧州で創出する』ことに貢献しています。私は欧州と密に連絡をし、意見提供に多くの時間を割いています。ノルウェーにはEUとの良好な貿易協定があり、規則によって我々は欧州と共通の道に置かれています。方向転換はタイミングを合わせることが非常に重要です。我々は新たな産業の創出に向けて速度を上げています」。

あらゆる指標がこの提携の成功を示しており、約500の産業パートナーを引き寄せています。現在、欧州のバッテリー投資は1000億ユーロ(約1150億米ドル)に達しつつあり、これは2017年比で約30倍になっています。

循環がもたらす利益

ノルウェーが着目するバリューチェーンの循環性は、倫理的というだけでなく有益でもあり、サステナビリティは優れたビジネスを生み出します。「我々はグリーン移行を大きなチャンスと捉えています」とAndresen氏は言います。「時間をかけたサステナブル化からはさらなる利益が生じます。これは要するに我々にとって、予想利益の大きな新しいバッテリーリサイクル産業を生み出すことです。投資と成長には利益が必要です」。

これを達成するために、HydroVoltはEVバッテリー原料の80%をリサイクルすることで政府目標を超えることを計画しており、CEOは90%もの数値を期待しています。また、同社はバリューチェーン全体における原料回収の改善と専門知識の向上に向けて、研究開発へのさらなる投資も計画しています。

中国には93箇所の「ギガファクトリー」があり、今なお世界のリチウムイオンバッテリー生産を支配しています。中国との競争において、サステナビリティはノルウェーの秘密兵器となるかもしれません。中国が環境インパクトの緩和に低い関心を見せている一方で、ノルウェーはサステナブルな産業ソリューションの世界的なリーダーとなっており、最終的に利益をあげることとなります。事実、FREYRでは、効率向上およびコスト削減と同時にリサイクルを行うことができる生産技術が利用されています。Jensen氏は次のように説明します。

「アジアの大半のバッテリー生産では多くの化学薬品が使用され、大量のエネルギーが消費されています。当社にはずっと短く、スケールダウンした生産プロセスがあり、そこでの廃棄物低減とエネルギー節約による利益の増加が見込まれています。バッテリーから原料を取り出し、それをリサイクルして再び使用する方が簡単です。当社は、自社の工場のスクラップをゼロにすることを目指しています。そのため、当社の製造工程はさらにサステナブルなものになります」。

Andresen氏は、ノルウェーのバッテリー産業はすぐに中国に追いつき、最終的にそれを超えることになると考えています。「我々がインパクトの大きい物を世界中に提供していることが契機となり、中国は現在、欧州進出をはかっています。」と彼は言います。

Jensen氏は、ノルウェーのバッテリーの将来が大きく約束されているとみています。「FREYRなどのバッテリー生産企業はノルウェーのバッテリーエコシステム全体に組み込まれています。当然、我々も気候変動と闘うことになります。これは内燃機関や化石燃料との闘いなのです。バッテリー市場は大きく拡大しており、寿命を迎えたバッテリーのリサイクルを主導しているのがノルウェーなのです」と彼は結論付けています。

ノルウェーのバッテリーバリューチェーンにもっと興味がありますか? Invest in Norwayまでご連絡ください。